「卓球部を作っても、僕と鶴島より強い人は現れなかったので、レベルが大きく変わることはありませんでした。」

「鶴島と卓球部を作ったのでレベルが上がったのではないのですか」と町会長。

「レベルが上がったのは、卓球部を作って1年ほどたったときでした。」

「1年後に何があったのですか」と町会長。

「僕が3年生になったばかりのころ、担任の先生が『卓球部を作って1年になるから、市の大会に出てみないか』と言ったのです。」

「それで、市の大会に出たのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。その頃になると、部員も10人近く集まり、正規の21本勝負の試合もしていたので、出ることにしました。」

「当時は、現在の試合と違って21本先取した人が勝ちだったのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。サーブも5本交代でした。」

「その試合が原因で、レベルが上がったのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。鶴島以外は、皆、1回戦で負けてしまいました。」

「鶴島は1回戦で勝ったのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。鶴島は、僕と勝ったり、負けたりしていたのですが、1級下なので、相手のレベルが低かったのだと思います。」

「渡辺さんは1回戦で負けてしまったのですね」と町会長。

「そうなんですよ。相手の選手が、バックから変化球サーブを出すのですが、そのサーブが返せなかったのです。」

「卓球部に変化球サーブを出す人がいなかったのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。変化球サーブを出す人も、バックからサーブを出す人もいませんでした。」

「それで、負けてしまったのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。それまではサーブの重要性を知らなかったのです。」

「卓球では、サーブが重要なのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。サーブに卓球のレベルが現れます。梅澤さんと試合を始めて数年たっても、全日本の上位に入ったことのある人と試合をした時、サーブを返すことができませんでした。」

「サーブの威力の差が卓球のレベルの差になるのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。梅澤さんは、サーブを1球目攻撃と呼んで、その重要性を強調しています。梅澤さんの話によると、中学生のときに関東大会で準優勝するところまで行ったのですが、高校生になってから勝てなくなってしまったのだそうです。そして、悩みに悩んだ末、初心に戻ることにしたのだそうです。」

「『初心に戻る』と言いますと?」と町会長。

「中学生のときは、家に帰ると、毎日、廊下でサーブの練習をしていたそうです。」

「また、サーブの練習を始めたということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。毎日、100球連続で入るまで練習したそうです。」

「それで、全日本に出場できるようになったのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。市の試合でショックを受けた僕と鶴島は、それから毎日バックから変化球サーブを出す練習をしました。サーブを返すためのツッツキという技術も、知らないうちに身につけています。」

「それで卓球のレベルが上がったのですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

2021/4/21

<筆者の一言>
息子は髪の毛に対する強いこだわりがあることに気が付いたのは、つい最近のことだ。去年の8月に、息子は社長から接待的というべき出張を仰せつかった。長崎ビューホテルに泊まって、豪華な料理を食べ放題、値段に上限なしという出張だった。

仕事の内容は、教育プログラムを博覧会に出店する人のお手伝いだったようだが、息子はそんな仕事はしたことがなかった。そして、出張など1度もしたことがないのに、出張先になんとかたどり着いて仕事が可能なギリギリの情報しか与えられていなかった。<続く>

2024/4/11